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日本の高甘味度甘味料の歴史(戦後の人工甘味料時代から天然ステビア甘味料の登場まで)


新春随想(月刊フードケミカル 2003-1 抜粋)
高甘味度甘味料の市場をふり返って


                         俣 野 和 夫
                         Matano Kazuo

 第二次世界大戦前の甘味料は、砂糖が主流を占め糖尿病患者等糖類の摂取を制限された人々のためにサッカリンナトリウムが医薬品として販売され、また漢方薬としての甘草が時たま使用されていた。

 ところが第二次世界大戦後、砂糖事情の悪化・供給不足は食糧事情と同様深刻なものであり、全国民が甘味料不足に陥り、甘味不足を補う意味からも天然の甘味(例えば甘茶)に頼る以外に方法がなかった。

 そこで厚生省は昭和21年5月に「溶性サッカリン」を、さらには同年7月に 「ズルチン」 を一般加工食品用として販売許可し、各種低甘味度甘味料(砂糖、黒砂糖等)の絶対的な供給不足を補い、甘味に対する国民の欲求不満を解消するために少しでも役立つようわが国の厚生行政が改正された。

 これらの高甘味度甘味料は、非常に貴重なものであり物々交換の対象品で米、貴金属類、衣類等と交換されたものであった。

 その後、昭和23年7月「厚生省令第23号および食品衛生法第7条および第10条の規定による食品、添加物および容器包装の規格および基準」が定められ、サッカリンナトリウムおよびズルチンが指定された。

 サッカリンナトリウムは、世界で初めて発見された高甘味度甘味料で砂糖の約300~400倍の甘味を有し現在でも使用されている。

 甘味料不足が漸く解消された頃の昭和31年5月サイクラミン酸ナトリウム(以下チクロと略す)が指定され、昭和36年6月にはチクロの塩違いであるカルシウム塩が指定された。

 チクロの甘味度は、砂糖の35~40倍であり、砂糖より爽快な甘味を有するが高濃度では苦味を感じるようになる。

 チクロが指定された当時の価格は2,800円/㎏という高値であったが使用量の増大と共に値下がりして、昭和44年当時の価格は220円~230円/㎏という安価であり、ちなみに上白糖の価格が108~110円/kg(日本精糖工業会調)であったので、砂糖と同甘味のチクロ価格は6円強という安値であり、加工食品のコスト引き下げの大きな要因となっていた。

 ちなみに昭和43年度の生産量は、約8,000トン/年であり、これは砂糖の28万~32万トンに相当する量であり当時の砂糖類の総需要量228万トン(日本製糖工業会調)の13~14%に相当する量である。

 しかし昭和44年11月にチクロ(カルシウム塩を含む)が削除され、加工食品業界に大打撃を与え、市場に大混乱を巻き起こした。それ以前の昭和43年7月にはズルチンが削除されている。

 なおチクロの削除に先立ち昭和44年2月にグリチルリチン酸二ナトリウムおよび同三ナトリウムが指定されている。

 チクロの禁止により砂糖代替品としての高甘味度甘味料は、サッカリンナトリウムを除いて市場から消え去った感があったが、これに代わる製品の研究開発熱が高まっていった。わが国では、既存添加物中心の研究が進められカンゾウ抽出物関連製品の品質改良が進められた。

 しかしカンゾウは漬物、醤油、珍味等塩味のある加工食品の塩角を取り甘味を付与するといった作用が主体で、単なる甘味料としては使用できないという欠点がある。

 次いで、パラグアイで産出するステビア葉に甘味成分が約4%含まれていることが知られていたのでこれを製品化すべく昭和50年頃から各地で栽培テストならびに有効成分であるステビオサイドおよびレバウデオィサイドを高純度で得る抽出方法の研究が盛んになり現在の製品が市場に出回るようになってきた。

日本の天然系・高甘味度甘味料と共に歩む・日本ステビア研究所(代表  守田悦雄)・(株)モリタ食材開発研究所